バンコクの宿に泊まっていた僕は
目覚ましによって朝5時に起きた。
朝8時に出発するバスを予約しているので
余裕を持って準備をする。
バスのスタッフに事前確認をすると
1時間前の7時には手続きをする為に来てほしいとの事。
本来、宿の朝食は料金に含まれているので
食べてから向かいたいところだが
食事は7時からなので残念ながら食べる事が出来ない。

6時半にホテルを出る為にチェックアウトすると
朝食を作っていたスタッフがバナナを1本渡してくれた。
こういう気配りは心から嬉しい。
バスステーションまでは徒歩で約30分。
荷物があるからタクシーにしようと悩んだが
バックパッカーの旅も慣れないといけないと思い
バッグを背負って歩くが結構きつい。

早朝から汗だくになりながら歩いていく。
タクシーを呼んだほうが良かったなあと思うがもう遅い。
僕の荷物はやっぱり多いようなので
カンボジア、ベトナムを陸路で旅する途中で
断捨離していかないといけないようだ。

30分歩いてようやく到着する。
バスのチケットは予約していたので
手続きをしてバスステーションでバスが来るまで待つ事にした。
入り口に50代から60代の男性が3人いたのだが
1人が僕に話してきた。
「日本人の方ですか?」
久しぶりの日本語で話しかけられ、
驚きと喜びで舞い上がってしまった。
どうやら3人組の日本人の方々は
これからシェムリアップのアンコールワットを観光する為に
バスに乗車するようだ。

偶然にも関西から来た方達で
尼崎や西宮から来たらしい。
僕は宝塚から来た事と、これから世界一周をする予定なのを
話したら盛り上がり、これからどこの国に行くのかと色々と聞かれた。
正直なところ、これから陸路で国境を超えて
治安はやや悪いイメージのカンボジアに行くのは不安はあった。
だけど、日本人に会えた事で安心してしまい
嬉しくて会話に夢中になった。
それから若い20代の女性も来て
3人組が話しかけると日本人だったようで
姫路からタイに住む友達に会いに来たらしい。
これから彼女もアンコールワットに行くと話してくれた。
バンコクからシェムリアップへ行く日本人は
結構いるんだなあと感心してしまった。
心強い仲間?と一緒にシェムリアップまで行けるのは
本当に心強い。途中までとはいえなんだかホッとしてしまった。
日本人同士の話で夢中になっていると
いつの間にか8時になっていて
近くまでバスが来たようでバッグを持っていき
バッグをドライバーに預けた。
中々、立派なバスだ。

定時にちゃんと来たし女性の搭乗員もいるようで
乗車前に座席の場所など説明してくれた。
二階建てのバスで1階は運転席とトイレ、
それからコーヒーなども置いておるらしい。
8時間という長時間の走行なので、
もちろんトイレ休憩はあると思うが
万が一の為にバスにトイレが設置してあるのはとても安心する。
バスの座席はなんと僕の席は1人用の席になっていて隣がいない。
そして前の席も無いから足が広々と伸ばせる造りだ。
そしてドリンクホルダーもあるし
充電できるUSBの差し込み口まである。
そして全員乗ると朝食用のパンとペットボトルの水が一人一人に配られた。
至れり尽くせりで感謝の気持ちでいっぱいになる。

これでチケット代は約5000円。
飛行機じゃなくてバスを選んで本当によかった。
バスが発車すると女性の搭乗員さんがアナウンスをする。
これから2時間おきにトイレ休憩がある事。
そして12時の2回目の休憩ではお弁当を配る事。
僕らにも分かりやすい口調の優しい英語だった。
正直、これ以上のクオリティーの高速バスは日本にも中々無いと思う。
ましてや食事を2回配布してくれて国境越えまで
手助けしてくれるのだ。5000円はコスパ良すぎる。
ラオスの列車で手痛い目にあわされたから
今回の陸路の旅はどうだろうと警戒していたが初回は大当たり。
バスの乗り心地も良くて景気も楽しめて最高としか言いようがない。
ちなみに一緒に乗った3人組は結構前側の席だったようで
後列に座った僕からは全く見えない。
女性の人は斜め前の席で2人席を1人で乗っていて景色を眺めていた。

僕は食事付きとは思っていなかったので
万が一、休憩所に食べ物が販売してなかったのを想定して
2食分持ってきてしまっていた。
それが荷物にもなっていたし、完全に空回りだった。
配給された朝食を食べてから少しでも荷物を減らそうと
用意していた朝食のパンを食べる。
それを見ていた搭乗員の女性が
「温かいコーヒーでも飲みますか?」
と言って1階に降りてコーヒーを入れてきてくれた。
優しさが嬉しかったけど、食べてばっかりで
食いしん坊に思われたんじゃないかと少し恥ずかしくなる。

バスは渋滞に巻き込まれたりしないで
休憩もピッタリ2時間毎にあり順調。
そして2回目の休憩時に休憩所で用意されたお弁当を渡される。
バスが来る時間に合わせて作ってくれたようでお弁当はまだ温かい。
こんなにサービスが良いとは思わず嬉しくてしょうがなかった。

これからのバス旅も楽しみだし、ヨーロッパでも
バスで行ける所は行きたいなあと陸路の旅の意欲が湧いてきた。
昼ご飯をバスの中で食べて1時間くらい走ると
女性の搭乗員の人がアナウンスを始める。
どうやらこれから出入国審査があるようだ。
搭乗員さんは僕に
「今のうちにトイレに行ったほうがいいですよ」
と話しかけてくる。
コーヒーといい僕にしか言ってこないような気がするんだが
見ていて心配なのだろうか?
とりあえず言われたようにトイレを済ませ
荷物を持って建物の中を目指しました。
出国手続きは難なく終えて
次のカンボジアに入国するゲートに行く。
カンボジアは日本人でもビザが必要な国だ。
ネット上で事前に手配していたビザを用意はしてある。
入国審査の列はすごい行列になっていた。
アトラクションの列のように並んでいる。
すごい人数なのに手続きの窓口はたった3つ。
しかも一人一人がなんのやり取りをしているのか
分からないけどかなり時間がかかっていて進む気配がない。
僕は例の3人組と一緒に並んでいたから
話をしながら列に並んでいた。3人組の1人が
「やっぱり発展途上国はアナログで手際悪いよなあ。
もうちょっとやり方を考えたら渋滞しないのに」
とブツブツ話していた。
ここまで道中は平和だったから文句を言いたい気持ちも分かる。
一方、1人で来ていた女性はなんと行列に並ばず
「お先です」
と言ってVIP専門もゲートから並ばず手続きも無く行ってしまった。
どういう事なんだろうと思い後で話を聞いたら
どうやらバスのチケットを買う時に一緒にビザも手続きしたら
VIP扱いになって出入国の手続きは不要だったらしい。
しかもそれでビザのお値段はたった6000円。
僕はネット上で8000円払っているから
全くメリットがないのである。
やっぱり情報ある方が海外は得する事多いなあ。
今更言ってもしょうがないので3人組と一緒に列に並ぶ。
ちなみに3人組は日本でビザを入手したようで
こちらもVIP扱いにはならないらしい。
1時間くらい並びようやく入国審査の番が訪れる。
質問らしいやり取りはなく
いつもの様に機械で指紋を照合して終わり。
前の連中は何故あんなに時間がかかったのだろう?
僕が日本人だからなのか、彼らのパスポートやビザに問題があったのか不明。
とりあえず無事にカンボジアに入国して一安心。

建物を出たら既にカンボジアに足を踏み入れているのが
分かるくらいタイと雰囲気が違う。
心なしかあまり治安は良さそうに思えない。
カンボジアの国境沿いは闇バイトとかで今
日本人の若い人が渡航して行方不明になっていると聞くし。
それがタイとの国境とは違うかもしれないが
治安がバンコクよりも
悪い気がなんとなくした。

バスを発見して乗り込み、全員が乗ると
バスは再び出発した。どうやら無事に全員入国できたようで
バス内で搭乗員の声の下、拍手喝采した。
それからカンボジアの田舎道を走り続け
ようやくシェムリアップに到着した。
バスは快適だったので8時間越えの移動でも疲労はほぼ無く、
景色を見ながら楽しめた。
バスを降りた僕らはホテルが違うのでそこでお別れをした。

明日は全員アンコールワットに行く予定だから
会えるかもしれないね、などと話ししながら(結局会えなかったけど)
ホテルまでGRABでトゥクトゥクを呼んで
1人になった寂しさを感じながらシェムリアップの初日が始まった。