翌朝4時に起きた。ポルトガル人の彼女は静かに寝息を立てている。
ベッドの横でロッカーから荷物を取り出す。夜中だから物音を立てないよう、パッキングは前夜のうちに済ませておいた。
皆が寝静まった静かな館内を歩き、深夜担当の受付スタッフに小声で挨拶をして建物を出る。
エーゲ海の旅を終えたらまたここに戻ってくる予定だ。少しの間のさようならだ。
薄暗く静まり返った街をバス停目指して歩く。宿周辺は郊外なので人通りもない。
街中に描かれた落書きが夜の暗さの中でいっそう不気味に見える。心拍数がどんどん上がっていく。
中心地に近づくと人影が見え始め、騒いでいる声が聞こえてきた。
どんどん物騒になっていくのが分かる。昼間と同じ街とはとても思えない。
歩道にテントを張って寝ているホームレス、酔い潰れているのか路地に座り込んでいる若い男性。誰がいつ襲ってきても不思議じゃない空気だった。
この旅で怖かった瞬間ベスト3を選ぶなら、このアテネの夜道と、
ラオスで真夜中に山奥へ連れていかれた相乗りタクシー、この2つは間違いなく入る。
それくらいバス停までの2キロは長く感じた。
中心地に近づくとパトカーが見えた。ランプを照らして停車している。何かあったのだろうか。
こういう時は警察の姿があるだけで少し助かる。パトカーの近くを通りながら目的地へ向かった。
ようやくバス停に到着した。掘っ立て小屋のようなプレハブの中にいるおじさんから1,200円でチケットを購入する。
少し安堵したが、バス停周辺もまだ治安が良いとは言えない。隣では黒人の男性2人がビールを飲んで騒いでいる。早くバス来てくれ。
ようやくアテネ空港行きのバスが来て乗り込むと、一気に気が抜けた。よかった、無事に乗れた。
安心すると同時に朝の早さもあってバスの中でウトウトし、バッグを抱きながら目を閉じた。
1時間ほどで空港に到着した。まだ5時半。人はほとんどおらず空港内は閑散としている。
緊張が解けると同時に空腹を感じた。そういえば朝食もまだだ。
ラウンジに行こうと思ったが、まだ早すぎてオープンしていなかった。残念。
搭乗口近くの売店でサンドイッチを買って朝食にした。時間があるので待合室で少し仮眠を取った。
定刻が近づくと人が集まってきた。今回乗る航空会社はライアンエアーだ。
アイルランド発の格安航空会社で、国際線旅客数では世界最大規模を誇る巨大LCCだ。
ヨーロッパ全域に加え北アフリカや中東の40カ国以上に就航している。
「Low fares, Made simple(シンプルな低運賃)」をスローガンに、
破格の運賃を売りにしている一方、低コスト体質ゆえに労使トラブルも度々起きている。
評判は賛否両論で、機内は清潔でCAの対応も悪くないという声もあれば、遅延が多いという指摘もある。
ただ安さに関しては群を抜いていて、ヨーロッパを格安で巡るバックパッカーには欠かせない存在だ。
列に並んで待っていると、前にいる男女の日本人らしい若者が話している。ハネムーンだろうか。
サントリーニで良い思い出を作ってほしい。僕も僕なりに思い出を作ろう。
飛行機が離陸すると、日の出の朝日とともにエーゲ海に浮かぶ無数の島々が見えてきた。とても綺麗だ。
なかなか見られない景色をこの旅でたくさん見てきた。これがこの旅の醍醐味だと思う。来てよかった。
サントリーニ、楽しみだ。

