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タダで眺める世界遺産

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この日も入場料は一切払わないと決めていた。

トプカプ宮殿、ドルマバフチェ宮殿は当時で8,000円。ブルーモスクは4,000円。

出せなくはない金額だが、節約旅の醍醐味はいかにお金を使わずに旅を楽しむかだ。

僕の旅を振り返ってみると、3,000円以上の入場料の場所には一度も入っていない。ツアーにも一切参加していない。

日本にいてもユニバやディズニーランドには行かないタイプだ。彼女がいない理由がここに全て詰まっている(笑)。

バリスタFIRE生活で身についた価値観は、旅先でも変わらない。

どれだけお金を使わずに楽しめるか。それ自体が僕の旅の楽しみ方だ。


アヤソフィア周辺に着くと、さすがイスタンブール随一の観光エリアだけあって人の密度が段違いだった。

スリも多そうだし、制服姿の軍人が要所要所に立って警戒している。テロへの備えだろう。

歴史的に幾度もの争いを経てきたこの場所が、今も緊張感を帯びているのだと実感した。

肝心のアヤソフィアは、残念ながら修繕中だった。

外観を覆う足場が景観を遮っていて、あの荘厳なドームを存分に眺めることができなかった。それだけが心残りだ。

でも周辺を歩くだけで十分すぎるほど楽しかった。

石畳の道にトラムがゆっくりと走り抜けていく。大きな公園に噴水、その向こうにブルーモスクのシルエットが広がる。

6本のミナレットが空に向かってすっと伸びている。

何千枚もの青いタイルで飾られた内部には入れなかったが、外から眺めるだけでもその存在感は圧倒的だ。

都会のど真ん中にこれだけの歴史的建造物が当たり前のように立っているのが、イスタンブールという街の途方もなさだと思う。

石畳の道にトラムが走り、路地の先にモスクが見える。都会なのに都会感がない。これがトルコのいいところだ。


噴水のそばにポンデリングのような丸いパンを売る屋台を見つけた。揚げたてのそれを1つ買って、噴水の縁に腰を下ろした。

ブルーモスクを眺めながらパンをかじる。世界的な観光地で、入場料も払わず、ただ座ってパンを食べている。

大半の人はもったいないと思うだろう。でも僕はこれで十分だった。いや、むしろこれがいい。

少し歩くと焼き栗の屋台があった。香ばしい匂いに引き寄せられて、1袋買った。

スルタンアフメット・モスクを眺めながら栗をひとつずつ剥いて食べる。

その瞬間、ふと日本の夏祭りを思い出した。中山寺の参道にも焼き栗の屋台があって、こんな匂いがしていた。

世界的な名所と宝塚の観光スポットを並べるのは申し訳ないけれど(笑)、あの時の気分がこれに重なった。

日本が少し恋しくなった。

ヨーロッパ側では結局、飲食店には一度も入らなかった。

想像以上に値段が高くて、屋台のパンと栗だけで一日を過ごした。それでもこれだけの景色を無料で楽しめた。

お金をかけなくても旅は十分に豊かになれる。この日がその証明だった。

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