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別の惑星へカッパドキア、洞窟の宿に眠る夜

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飛行機がネヴシェヒル空港に降り立った。タラップを降りて周囲を見渡すと、そこには荒野が広がっているだけだった。

ドバイの砂漠とはまた違う。あちらは砂の海が波打つような美しさがあったが、ここは違う。

枯れた大地が地平線まで続く、見渡す限り何もない乾いた荒野だ。

「本当に観光地の空港か?」

と思わず首をかしげるほど、周囲には何もなかった。

空港の建物に入ると、これがまた小さい。

ターミナルというより、地方の小さなバスの待合室に毛が生えた程度で、売店もぽつんと1つあるだけだ。

それでも荷物を受け取って外に出ると、ネットで予約していたシャトルバスを探す。

到着ロビーに目をやると、紙を手に持ったおじさんが立っていた。

近づいてよく見ると「KURA」の文字。僕の名前だ。

思わず顔がほころんだ。

見知らぬ異国の空港で、自分の名前を持って待っていてくれる人がいる。それだけのことなのに、妙にほっとした。

シャトルバスに乗り込むと、聞き覚えのある言語が耳に飛び込んできた。

日本語だ。振り返ると、若い夫婦が座っている。

目が合ったので軽く挨拶をすると、関西から夜行便でイスタンブール経由で来たばかりだという。

カッパドキアの気球と、イスタンブールの街を見るための旅らしい。

二人の雰囲気がどこか初々しく、もしかして新婚旅行かもしれないと思った。

世界一周の話をすると目を丸くして「すごいですね!これからどこ行くんですか?」と聞いてくる。

邪魔をするのも悪いので話は適当なところで切り上げ、窓の外に視線を移した。

バスが走り出すと、荒野の景色がゆっくりと流れていく。しばらくすると、遠くの丘の上に何かが見えてきた。

岩だ。いや、岩の塔だ。

蜂の巣のように無数の穴が開いた巨大な岩の塔が、荒野の中にそびえ立っている。

城?遺跡?いや、これは自然が作った要塞だ。ウチヒサル城

カッパドキアで最も高い岩の頂点に、人間が何千年もかけて部屋とトンネルを掘り込んだ場所。

まだギョレメにも着いていないのに、すでに別の惑星に来たような興奮が止まらなかった。

途中で夫婦の宿に差しかかると、二人は「楽しんでください!」と言い残してバスを降りていった。

手を振り返しながら、いい旅になるといいなと思った。

バスは再び走り出し、少し先で止まった。僕の宿だ。

ギョレメの街に降り立った瞬間、景色がまた一変した。

土色の岩山がそのまま街になっている。

岩を削って作った宿、岩の斜面に張り付くように並ぶレストラン、路地の先にも岩、また岩。これは街というより、

地球の表面に人間がこじんまりと間借りしている場所だと思った。

カッパドキアの中でもっとも人気のある宿泊エリアだというが、観光地っぽい騒々しさはない。

どこか時間の流れが違う、のどかな空気が漂っている。

宿に着くと、建物の外からオーナーが飛び出してきた。

両手を広げて「ようこそ!」とでも言いたげな満面の笑みだ。フレンドリーというより、もはや陽気という言葉がぴったりの人物だった。

日本人のお客さんが多いらしく、嬉しそうに話してくれる。

そういえば、日本で観ていた世界一周系のYouTuberの女の子も去年ここに泊まりにきたとか。

「あの動画に出てたのってここだったのか」と思わず笑ってしまった。世界は狭い。

ひと通り宿の説明を受けてから、僕はさっそくオーナーにお願い事をした。

「洗濯、できますか?」

オーナーは一瞬キョトンとした。

到着してすぐに洗濯を頼む客はあまりいないのだろう。でも快く引き受けてくれた。

「クラ、もちろんいいよ。800円ね。僕の家で洗ってくるから、明日の朝には返せると思う。

ただ……乾燥機に入れるんだけど、入れたらダメな素材の服ってある?」

最後の一言を、オーナーは少し恐る恐る尋ねてきた。

きっと過去に何度かそれでトラブルになったのだろう。その気遣いが少し可笑しくて、でも嬉しかった。

「大丈夫です、問題ないです」

そう伝えたつもりだったが、英語では今ひとつうまく伝わらなかったようで、

洗濯物を受け取りながらもオーナーはどこか不安そうな顔をしていた。

まあ、仕方ない。日本から着てきた服はすでに手洗いでくたびれたものばかりだ。

仮に縮もうが色落ちしようが、文句を言える立場ではない。

それでも、洗濯から乾燥までやってもらえることがただただ嬉しかった。

旅の疲れの半分は、清潔な服があるかどうかで変わる気がする。

部屋に戻ると、先客がいた。韓国人の若い男性で、英語がとても達者で、話しかけてきてくれた。

カッパドキアに観光で来たらしく、これから馬に乗るのが楽しみだと目を輝かせている。

ひとつ断っておくと、僕の英語は流暢とは程遠い。

自分の要件を伝えたり、簡単なやり取りをこなす程度で、旅をするには何とかなるが、雑談を続けるとなると途端にきつくなる。

そもそも日本語でもコミュ障で内向的な性格だ。英会話が数段上の彼と会話を続けるのは、正直かなりしんどかった。

改めて部屋を見渡す。パイプベッドが4台、ただ並んでいるだけだ。カーテンもない。プライバシーはほぼゼロ。

あるのは貴重品を入れるロッカーだけだった。おまけにここは洞窟部屋なので、外からの光が一切入ってこない。

部屋の灯りとベッドの灯りを両方消すと、完全な暗闇になる。目を開けても閉じても同じという、なかなか不思議な感覚だ。

ルアンパバーンのドミトリーはまだカーテンがあって、自分だけの小さなスペースがあった。

ここはそれすらない。4人のパーソナルスペースが限りなく近い。少しだけ不安を感じながら、それでも僕は横になった。

さて、4日間のカッパドキアの旅がはじまった。

何をしようか。

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